指先から消えていく……
ときどき、悪夢を見ます。朗読劇の本番、稽古もしてない点字台本を渡され、
ほぼ初見で読まなければならない状況に追い込まれるのに、
そのうえ、読もうとする片っ端から指先の点字が薄くなって消えていくという夢です。
もどかしさと恥ずかしさと恐怖に、汗びっしょりで目覚めたりするのです。
いきなり変な話から始めてしまいましたが、現実の世界でも、
ほんのちょっとそれに似た現象が起きています。
それは、駅構内などの点字表示です。
もう十年以上前から、駅構内の階段の手すりに、
行き先を示す点字表示が付けられるようになりました。
これは本当に画期的なことで、時間に余裕を持って行動していれば、
一人歩きの全盲者でも、自力で行き先を見定めて行動できるようになったのです。
たまに邪魔にされたり、何をしているのかに気づかない人に「大丈夫ですか」と
声をかけられたりすることもありますが、
それでも自力で行き先を知ることの嬉しさの前には、
たいした問題には思えない程度の障害です。
例えば、こんな風に書いてあります。
『左 一番線白金高輪方面、 右 二番線西高島平方面』
ところが、この重宝している点字表示が、むりやりつぶされていたり、
剥がされていたりすることもあるのです。
心無い人や、もしかすると何も知らない子供たちの仕業かもしれません。
こういう消された表示を触る度に、私は困惑と小さな怒りを感じると共に、
最初に書いた悪夢のことを思い出してしまいます。
思うにこれは、半分以上は悪意ではなく、
点字表示の存在や用途について知られていないが故の、
ほんの出来心的ないたずらなのではないでしょうか。
誘導ブロックについては、かなり一般的に浸透してきているので、
以前よりは少し障害物(ブロック上に立っている人も含めて)が
減ってきているような気がするのですが、
点字表示についてはほとんど知らされていないように思えます。
ここはまた一つ、ACか何かのCMなどで取り上げて
「これが私たちの行き先を示してくれる点字です」などというコメントが流れると良いのですが。
点字表示が剥がされていることに関して、もう一つ困ることがあります。
それは、金属製の点字表示のプレートが端からめくり上げられ、
尖った角で指を怪我してしまうことがあるということです。
というか、私自身が経験してしまったのですが。
これは、出来心で済まされてはたまらないことです。
何しろ、そういうところを触るときには、意識的に点字を読む指を使っているのですから、
その指先を負傷してしまっては、日常生活で必要な点字を読むこともできなくなってしまうのです。
また、これは本当に公共物破損でもあるので明らかに悪いことなのですが、
先日東京メトロ東西線の高田馬場駅に設置されている大変優れものの触知案内板に
付いている音声案内を聞く押しボタンが、一つを除いて全て毟り取られ、
残った一つも壊れてしまっているという物に出会ってしまいました。
あまりの酷さに、しばし声も無く立ち尽くしてしまった私でした。
そんな中、来週の火曜日訪問する予定にしている杉並区の小学校では、
4年生の子供たちが、学校の中のバリアフリーやユニバーサルデザインを
考えようということで、教室の番号や階段の手すりの点字表示を作ったりする試みを
しようとしているそうです。以前この学校に行った時にも、
去年の4年生が張ったという点字シールがところどころにあって、
ちょっと感動してしまいました。
今度訪問するのも、そういう配慮をする際に、どんなことに注意したら良いか、
必要な情報、不必要な情報などに関するアドバイスがほしいということで
呼ばれることになったのです。
この試みは、視覚障害者だけでなく、聴覚障害者や車椅子のユーザーも招いての企画で、
いろんな立場から、誰でも暮らしやすい環境を考えていこうとしているそうです。
こういう学校がもっと増えて、子供たちの意識が変わっていけば、
さらにみんなが住みやすい町ができていくでしょう。
こうやって思いやりの心を養う一方で、
さまざまなバリアフリー的な配慮を多くの人に知ってもらう報道がなされていけば、
福祉もさらに一歩前進するのではないかと思うのですが……。
ながら仕事でもホームページが楽しめる音声ブラウザ・ボイスサーフィン