遠藤さん、ありがとうございました!--その想いをつないで
去る10月24日、私の大恩人・沿道貞男さんが逝かれました。 今現在、首都圏に住んでいる芝居好きの視覚障害者で、享年86歳でこの世を去られた彼の事を知らない人はいないのではないでしょうか。
それ程に、その功績は素晴らしい物でした。私もそのご他聞に漏れず、大変お世話になりましたが、近年お体を壊されてからはなかなかお目にかかることもできずにいました。そして突然の訃報。無理にでもお会いしにいって、お世話になった者として孝行すべきだったと後悔しても、神に召されてしまった氏に届くべくもなかったのだけれど、せめてものお見送りにと、カトリック大宮教会で行われた告別式に出席してきました。
遠藤さんが成し遂げられたこと、それは、視覚障害者に演劇を楽しむ機会を与えてくださったということです。 ご自身は、長年にわたり日本銀行に勤務されていた傍ら、多くのジャンルの演劇、とりわけ新劇を愛し、あのお硬いイメージの日銀の中にあって、有史を集めて演劇部を発足し、演出・出演の両方を
しっかりこなしておられた程のめりこまれていたようです。 また、27歳頃にカトリックの洗礼を受け、敬虔なカトリック教徒として熱い信仰を持たれ、それゆえかどうか、視覚障害者のためのボランティアとしても活躍されていました。演劇をなさっていた部分と、信仰に根ざした深い愛から自発的に他人のために尽くす活動をしていた部分の接点として、遠藤さんは対面朗読ボランティアとしても活躍され、多くの視覚障害者のご友人を持たれていたのです。その対面朗読の活動の中で、ある中途視覚障害男性がふと漏らした一言「ああ、またお芝居を観られたらなぁ」という言葉に衝撃を受けた遠藤さんは、その実行力を生かし、視覚障害者にも演劇を楽しんでもらいたいという想いをどんどん実現していかれたのです。
その第一歩として、1976年、劇団民芸の「奇跡の人」という、サリバン先生とヘレン・ケラー女子を巡る重い感動のストーリーを、最前列で視覚障害者に堪能してもらおうという観劇会を開かれたのです。
以後、この民芸と俳優座を中心にいろいろな新劇の劇団に働きかけ、最前列での観劇や公演毎の点字パンフレットの作成と配布などを実現してこられ、その功績が認められ「ヘレンケラー・サリバン賞」という、視覚障害者の福祉増進・文化向上に活躍された方に送られる賞も受賞されました。
さて、その第1回目の観劇会「奇跡の人」の奈良岡朋子さん演じる素晴らしいサリバン先生にすっかり心を奪われて、客席最前列で呆けたようになっていた12歳の全盲少女がいました。…、何を隠そう(いや何も隠していませんが)、それが私、美月めぐみだったのです。その後、紆余曲折ありましたが、最終的に舞台役者の道を選んでしまった私の、それが大きな原点だったと、今回の遠藤さんの死で、改めて自覚させられると共に、大きな感謝の気持ちが胸に湧き上がり、はちきれそうになり、眼からぼろぼろと溢れ出してしまいました。
その後も、私が本格的に劇場通いするようになった21歳の頃のきっかけは、やはり遠藤さんが主催してくれた、俳優座の「セツアンの善人」の観劇会でした。
このお芝居は、主役の栗原小巻さんに惚れ込み過ぎて三日間も通い詰め、さすがの遠藤さんにもすっかりあきれられ、あちこちの講演の際に「こんな芝居バカの全盲の女の子もいます」という例として語られてしまった程でした。
告別式には、視覚障害者の参列者を含め、多くの方が集っておられたのみか、有名な役者さん・芸能人の方・アーティストの方からもたくさんの弔電が届いていたようで、改めて氏の功績に驚かされました。 また、カトリックの厳粛な儀式であったにも関わらず、今まで出席したどんな告別の儀式よりも、故人に対する想いをたっぷり詰め込んだ素晴らしいお式でした。参列者ばかりでなく取り仕切った外国人の神父さんまで、個人的な想いも込めた心からのお祈りを捧げておられ、悲しさの中にもとても暖かな空気に満ちた儀式となっていました。私は、初めて個人的に遠藤さんとお話させていただいたとき、その穏やかな話し方に、「遠藤さんって、もしかして神父さんかなんかしてらっしゃるんですか?」とお尋ねしてしまい、「とんでもないよ。僕はただのじじいです。」と照れくさそうに苦笑されたことを思い出し、思わず泣き笑いしそうになってしまいました。
最後に、まだまだ話しきれなかったことがありますので、遠藤さんについてもっと詳しくお知りになりたい方に参照していただけるページを探してみました。ここにurlを貼り付けておきますので、ぜひアクセスしてみてください。生前の記事のようです。
http://www.seibonokishi-sha.or.jp/kishis/kis0012/ki03.htm
さてさて、少しオマケです。
そんな遠藤さんに、現世から少しでも恩返しできるように、さらに舞台に精進していこうと決意した私が次に立つ舞台をご紹介します。 詳しくは、また近々書かせていただくことにして、簡単な第一報です。
演劇結社ばっかりばっかり第三回講演『トイメン』
場所:原宿・ギャラリーハセガワ
日時:12月10日(水)~14日(日)(5日間9公演)
各会30名様、完全予約制
料金:2000円
原宿駅からの誘導あり。
お問い合わせ:TEL 080-6724-5981
対面朗読を巡る、痛快福祉系コメディーです!
ぜひお越しください!!
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